昨夜の米国株式市場はS&Pに引っ張られ約0.5％値下がり。金利とコモディティ価格も低下し、直近の上昇に対するポジション調整を思わせる展開となった。

金利の低下とやや矛盾する形で、カナダ中銀が資産購入の終了を発表し利上げの前倒しを示唆したり、ブラジルも大きく1.5%の利上げを行い12月にも同じ規模の利上げをすると表明したりして、全世界的に引き締めの動きが加速している。それと同時に今夜発表予定の米国GDPに対する成長懸念が高まり、引き締めの影響を上回り金利が低下しカーブがフラット化。GDPは市場予想で年率～2.5％伸びる見込みだが、Q2の6.7％から大きく減速の見通し。かろうじてマイナスを予想しているエコノミストもいる中、スタグフレーションが再び話題になりそう。

一方、自動車大手のフォードが好調なQ3決算を発表し市場予想を上回る着地と想定を超える年間見通しの上方修正を発表した。ところが、中身をみると売上成長を牽引しているのは好調な台数増とシェア拡大ではなく、単価上昇とその他要因。下図を見てください。

![image.png](https://grid-images-production.cryptact.com/1c9fe683-ee05-4f83-b164-fbeadc786995)
ハイライト：

* 北米においてQ3の出荷台数が16％減少したものの、売上は5％の減収に留まった。
* 同地域でQ3累計も9％の出荷減に対しむしろ7％の増収。
* 欧州でも似た傾向があり、Q3の9％出荷減少に対して7％の増収。累計も0％と＋20％とそれぞれ同傾向。
* 自動車事業全体をみるとQ3は約10％の単価引き上げとその他要因で4％の減収に留まった。

合わせてBLSが発表する消費者物価指数（CPI）をご覧いただければ、足元の新車価格が前年比10％弱の増加となっていることがわかる。完成の業績と単価の上昇がリンクしていることはもちろん偶然ではない。

![image.png](https://grid-images-production.cryptact.com/8ccd0289-f0ec-4d19-b87e-c236c8139edc)
これが製造業が経験している、数十年ぶりのパラダイム。多くの決算の電話会議の議事録をみているが、米国の消費者の値上げに対する許容度が高い。前代未聞の金融緩和と財政対策でテレワークができる中間層や富裕層の消費者の購買力が維持、向上させられ、10％～20％の値上げを容易に受け入れられる。

業績がいいから株価が上がり続ける！と思われている方は、是非こういった事例もみて業績を支えているインフレの影響も念頭に置いておいてください。

【2021.10.28】フォードの決算からわかるインフレの影響。全体は引き締めと成長懸念が重なる。