金曜日の米国株式市場はまちまちな展開。欧州で再ロックダウンの懸念が広がると、巣ごもり系、金利下落からのグロース系銘柄が買われる一方で、銀行、エネルギー、航空系などが下落。コロナ禍初期のような反応となった。FRB高官から次回の会合でテーパリング加速について議論する可能性も示唆されたが、金利市場に大きな影響は結果的に与えなかった。

各国が原油高に対抗するために石油備蓄の放出について言及。日本でも備蓄余剰分については放出するようだ。備蓄放出による原油市場への影響は、実際のところはそう大きくないと思うが、これによる心理的な影響からの価格下落を狙ってのことだろう。そういう意味ではこけおどしに過ぎないものの、実際に原油は直近の高値から10%近く下がっており、今のところは功を奏している。ただし繰り返し使える施策ではないので、話題性含めて吸収されてしまったら、より原油高に向かう懸念もあるので要注意。

岸田政権の経済対策について、あらためて深堀りしてみようと思う。先週指摘した通り、メッセージ性が0のためあまり注目もされていないのが実際だが、だからこそ中身を見てみる。

まず規模面。事業規模79兆円、財政支出規模55.6兆円と昨年12月5日に国会通過した菅政権の総合経済対策(事業規模72.9兆円)を更に上回っている。GDP規模で換算すると米国で320兆円近い水準であり、これは現在米国で進められている、総額2.9兆ドル(インフラ投資1.0兆ドル、社会支出予算1.75兆ドル)の対策を上回る水準となっている。

ただ予算が最も増えた領域は、病床増設、ワクチン在庫増強、新薬開発支援金への巨額予算割り当てなどによりコロナ感染対策防止策。これが総額22.1兆円と財政支出額の39.7%にも達し、菅政権の同項目支出額(5.9兆円)の4倍近い金額となっている。これは必要な予防的措置ではあるものの、経済対策としては考慮しづらい項目である。

予算が想定以下だったと思われるのが、「経済活動の再開」関係の刺激策である。財政支出レベルでGOTO関係が2.5兆円(vs菅政権2.6兆円)、各種給付金関係4.1兆円(vs菅政権10.6兆円)、その他助成金2.6兆円(菅政権0)と、総額で言えば菅政権時代から減額となっている。この辺りは純粋に投資家からみれば失望視されていると想定される。実際あるストラテジストと話していると、給付金の減額やGOTO予算までも菅政権を下回っている現状について、多くの外国投資家から「重要な“消費ブースター”を失った」「ペントアップデマンド期待の急速な落ち込み」との批判が寄せられている模様。

一方で、岸田政権が今回押し出している看板経済対策「新しい資本主義の起動」政策のメインである、“企業成長戦略支援策”については、予算配分が19.7兆円と、菅政権の10.6兆円を9.1兆円も上回る内容となっている。関係するセクターについてはポジティブ視される可能性がある。具体的な脱炭素関係、デジタル化支援、5G半導体開発支援、サプライチェーン強靭化などへの予算が大きく上乗せされており、おそらく甘利さんが絵を描いている内容だと思われるが、関係しそうな自動車セクター(EV関係)、半導体セクター、電機・精密などハイテク機器関係の銘柄は恩恵を受ける可能性がある。

これらの支援策がどの程度実態を伴っての効果があるかは、時間をかけてみてみないとわからない。経済刺激策に比べて即効性が薄いためだ。ただ、株という意味では先に期待値が入り込みやすい、かつ機関投資家向きのセクターでもあるため、バズワードに反応する株価の動きというよりかは、これからじわじわとパフォーマンスが効いてくる可能性もある。甘利さん肝いりであることと、対策上乗せの金額が金額なだけに注目に値するとは思われる。

主要市場の動き

ダウ 35,601.98 (-0.75%)
S&P 4,697.96 (-0.14%)
NASDAQ 16,057.44 (+0.40%)
FTSE 7,223.57 (-0.45%)
米国10年金利 1.5479% (-0.0393)
原油 75.68 (-3.48%)
ビットコイン 6,762,947 (-0.90%)